乳がん患者さんへの幸せな性生活へのアドバイス
満足のいく性生活を見つけるために 治療によって、性生活にさまざまな変化が出ることがあります。起こりうる変化を知っておけば、実際にそのようなことが起こった場合に適切に対応することができ、変化を最小限に抑えられます。 同じ治療を受けていても、変化には個人差があります。ご本人の回復度、パートナーの受け止め方、カップルとして性を重要視する程度、などにもよします。性生活をたのしむためには、からだだけでなく気持ちのコンディションや二人のコミュニケーションがとても大切です。いそがず、ゆっくり、お互いが満足できる方法を見つけていきましょう。新 着 情 報
パートナーとしての役割
パートナーのあなたに、性生活に限らず、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。性生活というのは、からだやテクニックだけのことではなく、それ以上に「相手を大切にしたいと思う気持ち」が重要だという点です。
性生活をカップルの関係全体から切り離すことはできません。
病気は治療を受けるご本人とパートナーの双方にとって大きな出来事ですが、お互いの心づかいとコミュニケーションによって、お二人の絆をより深めるきっかけにもなります。
毎日のちょっとしたサポートが嬉しい
治療を受けるご本人から「パートナーのちょっとした心づかいや優しさがとても嬉かった」という声をよく聞きます。
たとえば、荷物を持つ、家事を手伝う、疲れた顔をしていたら「無理するな」と声をかけるというよな、ちょっとしたことです。
大げさでなくとも、日常生活のさまざまな場面であなたの優しさを身近に感じることは、ご本人にとって心癒されることです。それは、前向きに治療に取り組むエネルギーにもなります。
一緒に考えよう
診断後、治療の選択・家庭のこと・職場のことなど、考えなくてはならないことが山積です。
一時的にせよ暮らしのさまざまな状況が変わりますし、初めて対処する物事もあります。
そのような時「君の好きなようにしていいよ」とはじめから言うのではなくすぐに答えが出なくても、二人で一緒に考えてみてください。一人であれこれ悩むより二人で相談したほうがいいアイデアが出ますし、お互いの心配のタネがわかってコミュ二ケーションに役立ちます。問題点を整理することで解決の糸口も見つけやすくなるでしょう。
察するのではなく、聞きましょう
相手の立場にたつことや相手の気持ちを察することは、私たちの暮らしを円滑にしてくれます。
しかし、カップルの一方が病気になったとき、相手の状況を想像だけで理解するのは難しいことです。
いくら望んでも、苦労やつらさを肩代わりして体験することはできませんし、相手の気持ちの変化を100%正しく察することもできません。
あれこれ察するのではなく、ざっくばらんに本人に聞いてみましょう。治療を受けるご本人の中には「周囲に負担をかけて申し訳ない」という思いからご自分の気持ちや希望を周りに伝えることをためらう方もいます。そのような遠慮の感情を抱く必要はないにもかかわらず、です。
今まで以上にコミュニケーションをとり、ご本人の今の心配ごとや、してほしいことなどを教えてもらいましょう。直接聞くことで、行き違いや取り越し苦労を解消し、ご本人の状況にあった手助けをすることができます。
言葉で言ってほしいときもある
心細いときこそ、パートナーの暖かい愛情表現の言葉は嬉しいものです。「愛している」「君が大切なんだ」と、(今まで言ったことのないセリフでも)思い切って伝えるのも効果的です。
メールや手紙で伝えてもよいでしょう。
言葉では伝えきれないとき
どんな言葉でも伝えきれない感情はあります。そんなとき、黙って手を握ったり、静かに抱きしめたりすることが、千の言葉を超えることもあります。
ご自分のコンディションも大切に
大切な人の病気は、あなたご自身のコンディションにも少なからず影響するはずです。
周囲のサポートをできるだけ得て、ご自身のからだと心をゆったりさせる時間もとりましょう。
親しい友人など、誰かに話を聞いてもらうだけで楽になることもあります。
手術の影響による性生活
手術部位やわきの下(リンパ節を切除したあたり)の感覚が変化し、愛撫によって違和感・不快感を生じることがあります。
手術前に乳房への愛撫を大切にしていた場合、以前ほどの性的快感を得られないことがあります。
時間がたつにつれて徐徐に軽くなることが多いのですが、長く続く場合は、主治医やペインクリニックの医師などに相談してみましょう。
配慮のポイントと対処法
関節を無理に動かさない。
腕や肩関節の動きがまだ回復してないときは、パートナーを抱擁したり、からだを支えたりすることが難しい場合があります。関節を無理に動かさないようにしましょう。
クッションや枕を使ってからだを支えることもできます。
手術した部分を直接圧迫しない
男性上位のとき、パートナーのからだで手術した部分を圧迫されるかと心配になる方もいます。
その不安を相手に伝え、直接圧迫しないよう気をつけてもらいましょう。
体位を変えるのも一法です。
下着や補正具でカバー
手術による身体の外見的な変化は、人によって受け止め方が違います。
変化が気になって性生活に前向きになれなかったり、性的快感に集中できなくなったりする方もいます。
気になるのであれば、下着や補正具などでカバーするのもいいでしょう。
放射線療法の影響
個人差はありますが、全身倦怠感のために性生活がおっくうになる方もいます。
照射部位の皮膚炎のため、ヒリヒリ感・乾燥感・ただれなどが生じ、性的快感が損なわれることがあります。
配慮のポイントと対処法
疲労感が強いときには、無理をすることはありません。照射部位の皮膚のへんかが強いときには、その部分を直接こすったり、圧迫したりしないように気をつけてください。
化学療法(抗がん剤治療)・内分泌療法の影響
化学療法による全身症状(全身倦怠感・食欲不振・脱毛・体重変化・悪心嘔吐・筋力低下など)が強い時期には、性欲も減退しがちです。人によっては、自分の体力や身体的魅力への自信が揺らぐこともあります。症状が強い時には無理をしないことです。
ただ、強い全身症状は一時的である場合が多いことを覚えておいてください。
配慮のポイントと対処法
痛みがあれば我慢せず、パートナーに伝えましょう。
化学療法や内分泌療法では、卵巣や女性ホルモンの働きが抑えられることで、膣の乾燥や膣粘膜の萎縮が生じます。その結果、性交痛を伴うことが多く、痛みが続くと性生活への意欲もそがれてしまいます。化学療法で卵巣の働きを特におさえるのは、シクロフォスファミドやアンスラサイクリン系の薬剤です。内分泌療法による性交痛は、タモキシフェンの場合はそれほどでもないといわれていますが、LH-RHアゴニストの場合には出ることがあります。とはいえ、かなり個人差があるのも事実です。痛みを我慢せず、パートナーに伝え前戯をのばすなどの配慮をしてもらいましょう。水溶性の膣潤滑ゼリーも効果的です。また、性交そのものをゴールにしないで、快感を得るためのほかの方法を試すのもよいでしょう。
適度のエクササイズや気分転換も効果的
治療によっては、生理不順や早期閉経がおき、ほてり、発汗、イライラ、不眠などのいわゆる更年期症状を生じることがあります。治療による更年期症状は、加齢による場合よりも急激に出る傾向があり、症状が強い時には性生活に積極的になれないことが多いものです。更年期症状に対してよく用いられる女性ホルモン補充療法は、乳がんを悪化させる可能性があり、使うことができません。その他の薬物治療(末梢循環改善薬睡眠薬・抗不安薬・漢方薬など)が効くこともありますので、主治医によく相談してください。また適度のエクササイズや気分転換も効果的です。
生理がとまっている間も、妊娠を望まなければ避妊は必要です
化学療法や内分泌療法のために生理がとまった場合、治療を受けたときの年齢や治療内容にもよりますが、急に排卵が戻ることもあります。妊娠を望まないのであれば、生理がとまっている間、コンドームによる物理的避妊が必要です。ピルは乳がんを悪化させる恐れがあるので、使うことができません。
コミュニケーションをとりましょう。
変化がおきている時、一番の敵は沈黙です。
性行為にともなって違和感や痛みがあったら、我慢しないでできるだけパートナーに伝えましょう。
性交痛・肩関節の痛み・皮膚の違和感・からだの疲れなど、ご本人が変化を伝えない限り、パートナーはわかりません。
性についてはっきり話し合うカップルはそれほど多くありませんが、察してもらうにも限度があります。変化がおきているときこそ、勇気をだして相手に伝えることが肝心です。
コミュニケーションを心がけた結果、以前より性の満足度が高まったというカップルもいます。
また、前向きで正直な気持ちを伝えあうコミュニケーションは、性生活に限らず、カップルの関係全般にわたってとても大切なことです。
我慢は禁物です。
「我慢をしない」ということも、重要です。
病気とわかる前の性生活を思い出してみてください。
ご自分の満足をいつも大事にできていましたか?
時には相手の満足のほうを優先していなかったでしょうか?
性行為にともなう痛みや不安感があると、快感に集中する気持ちがそがれ、ますます苦痛が強まる悪循環が生じます。
また、我慢は長続きしませんし、いよいよ我慢しきれなくなったときに、思わず攻撃的な言葉が出てお互いに傷つくことがあります。
苦痛を伝えるときには、相手を非難するのではなく、「ここがつらい」「こうしてほしい」のように、できるだけ具体的に、前向きに伝えてみましょう。
パートナーの方は、ご本人の話をよく聞いてください。
パートナーと話し合うことがたいせつです。
カップルそれぞれに、慣れた性生活のかたちがありますが、再開した当初は前のようにいかないことが多いものです。しかし、前と同じである必要は全くありません。
性生活への気持ちがあっても夜には疲労がたまる場合、夜にこだわらず余力のある時間を使いましょう。
同様に、からだの痛みがあるなら、鎮痛剤がよく効いているときに寄り添うのもよいでしょう。
性交痛がある場合、我慢しないでパートナーに伝え、十分前戯の時間をとってもらいましょう。
水溶性の潤滑ゼリーも大変効果的です。
潤滑ゼリーはご本人とパートナーのどちらが使ってもよく、たっぷり使うのがコツです。
また、女性の方が動きをコントロールしやすい体位をとることで、痛みへの恐怖感を和らげることができます。
性生活のときの着衣も、そのときのふたりにとって、もっとも楽なかたちでかまいません。
当初は手術のあとを保護する意味からも、下着などをつける方が少なくありません。
当初はそうでも、ある時期から下着などをつけなくなるカップルもあります。
いずれにせよ、「今はこうしたい」「こうしたほうが楽」と、パートナーに伝えて二人で話し合うことです。
薬剤の副作用として性欲低下を理解する
性生活への関心を失う原因として、乳がん治療以外の医学的な要因もありえます。
たとえば、性欲の低下は、うつ病の症状のことがありますし、確率は低いものの、降圧剤、不整脈治療薬,高脂血症治療薬、抗不安薬、消化性潰瘍治療薬、利尿剤などの薬剤の副作用として性欲低下が出現することがあります。
ただし、それらの薬をのんでいたとしても、性欲低下の原因になっているとは限りません。
自己判断で服用をやめるのではなく、主治医によく相談してください。